9. 焼付け作業 / シンプルな技術
ガムプリントが「絵画調」に見えるもっとも大きな理由は、再現可能な階調域が非常に狭いことにある。再現できる階調域が狭いということは、前回の記事の画像のように、かきなぐったようなタッチになりがちだが、それでは「写真」にはならない。
8. 焼付け作業 / 野島康三のガムプリント
ガムプリントの焼付けは、紙に感光液を塗り、ネガを重ねて紫外線で露光し、水で洗い流す。これだけである。非常にシンプル。 印画はこんな調子になる。(これは本番プリント。テストや失敗ではない。)
7. プリント用ネガ作成
今回使用した松涛美術館所蔵の野島康三のオリジナルネガは、ブローニフィルムで撮影されたもの。ネガケースには、1958年10月の日付、フィルムはネオパンSS、使用カメラはローライフレックスと記載がある。フィルムには、人物部分をトリミングした手札サイズの白黒写真が添えられており、それにさらにトリミングを指示する枠が描きこまれている。
6. テストプリント
感光液とネガのマッチングテスト 銀塩印画紙と比較すると、ガムプリントは印画上に再現できる階調の幅が、非常に狭い。そのため、それに合うようにプリント用ネガの階調を調整する必要がある。
5. ガムプリント作業工程/ サイジング
ガムプリント作業の全工程 1サイジング 紙にゼラチンを塗布し、感光液が紙の中まで浸透しないようにする。 2テスト
4. 使用素材について
ガムプリントは写真の印画法の中でも、最もシンプルな部類に入る。主要な素材は紙と顔料とアラビアゴムで、感光化するために使用する薬品はひとつだけである。現像は水でおこなう。
3. 野島康三ガムプリント作品の素材・技法
以前、野島の1930年代のブロムオイルの作品は数点みたことがあったが、ガムプリント作品はもとより、これだけまとまった量の野島作品を見るのは初めてだった。
2. 日本の写真史とガムプリント
10年以上前からデジタル写真が普及し、現在では「写真」という言葉は、プリントされた紙のことではなく画像データを指すようになった。
1. 野島康三について
野島 康三(のじま やすぞう 1889年2月12日-1964年8月14日)は、日本の戦前期を代表する写真家のひとり。美術に対する積極的なディレッタントとしても有名。
写真作品は、初期のピクトリアリスムの絵画的な作品から、当時の流行に合わせてストレートな表現に移行した。ピクトリアスムの頃のポートレート等が現在も評価されている。
野島康三のネガからガムプリントを作る
野島康三(1889-1964)が「芸術写真」の時代に手がけたガムプリント(ゴム印画)は、同時代においても、そしてその後この技法が用いられなくなってから現在に至るまで、写真史上に類を見ないほどの完成度に達しているものであった。