野島康三のネガからガムプリントを作る

 

 

Portrait of Mr. S Yasuzo Nojima 1921
gum bichromate print 26.9×18.4 The National Museum of Modern Art, Kyoto

 

野島康三(1889-1964)が「芸術写真」の時代に手がけたガムプリント(ゴム印画)は、同時代においても、そしてその後この技法が用いられなくなってから現在に至るまで、写真史上に類を見ないほどの完成度に達しているものであった。しかしながら現在、そのことについて、技術面でも、また歴史的な意味づけの面でも、正当かつ的を射た評価がなされているとはいえない。(ここで「正当かつ的を射た」というのは、ただたんに顕彰することではなく、批判的な検証を正しく加えるということだ。)このことは、我々の「写真史」が、歴史を忘却することで成立してきたこととも関係がある。

(参照記事:λανθάνομαι: 忘却について

今回、野島のオリジナル・ネガ・フィルムからガムプリントを制作する機会を得た。以下に具体的な作業プロセスの記録を示すとともに、作業にあたっての考察を書きとどめておく。