紙について

 

様々な紙が鶏卵紙に使用できる。表面に卵白液がムラなく塗れて、バインダー層が形成できればいいので、特に種類は問わない。滑面でツヤがある紙だとプリントの精細感が上がる。

一般的によく使用されるのは水彩画用紙。手に入れやすく扱いやすい。
ただ、紙がアルカリ性だとプリントに問題がおこることがある。そして、ほとんどの高級水彩画用紙は保存性を高めるためにアルカリ性になっている。そのため、オルタナティブ・プロセス用に中性に調整した高級紙がいくつか出ている。

 

Bostick & Sullivan

http://www.bostick-sullivan.com/cart/home.php?cat=18

 

だが、高級画用紙をわざわざ取り寄せなくても、もっと良い紙がある。世界的にも非常に評価の高い、和紙だ。

 

少し和紙の話をすると、世界の美術修復の現場でもっともシェアの高い紙は高知の和紙だ。バチカンのミケランジェロの壁画も土佐和紙で修復されている。和紙は保存性においても美しさにおいても、世界に他に類がないほど評価が高い。そしていまや絶滅寸前の状態なのだ。手漉き和紙はもう漉く人がいない。後継者がいないからだ。そして漉いても買う人がいないので売れない。工業製品の銀塩印画紙が無くなることを嘆くくらいならば、和紙の現状の方こそよほど憂慮するべきではないだろうか。

 

和紙は雁皮、楮、三椏を主な原料にして作られる。

王妃のように気高い「雁皮」

武士のように強壮な「楮」

官女のように典雅な「三椏 」

これは柳宗悦がそれぞれの特徴を言い当てた至言だ。

近年、ネット販売で和紙を扱う店が増えている。見本紙や見本帳を用意しているところもあるので、
実物を確認して注文することができる。 オルタナティブ・プロセスを手がけるのであれば、和紙を選択肢に入れることをおすすめしたい。

 

 

 

 

その品位と潤沢と威信とに於て、雁皮の美は比類なく、その生命は永劫である。柔剛、虚実、こゝに凡て相会ふ。この世の如何なる紙も之ほど気高くはあり得な い。楮は紙の国を守る男性である。繊維太く強靭である。荒い仕事をもよく耐え忍ぶ。之あるがために和紙に今も勢ひがある。楮なくば紙の世界は如何ばかり力 を失ふであらう。之に比べ三椏は紙境を柔らげる女性である。どんな紙も之より優雅ではあり得ない。肌理(きめ)細かく膚(はだえ)柔かく、性穏和である。三椏なくば紙は風情を減ずるであらう。

柳宗悦「和紙の美」