ネガについて

 

どの写真技法においても同様だが、プリント方法の階調域にマッチしたネガで焼いた場合に最も美しいトーンをプリントすることができる。鶏卵紙は再現できる諧調域が広い(トーンレンジが長い)ため、銀塩フィルムで撮影したオリジナルネガや、コロジオン湿板などのアナログネガとの相性が良い。

ただし、フィルムやコロジオン湿板のネガであればどのようなものでもいいわけではない。濃度やコントラストが適切に調整されたネガでなければ、アナログネガを使う意味は無い。さらにいうと、そもそも美しく魅力的な写真でなければわざわざプリントする理由がない。 どのような内容であっても、アナログネガでオルタナティブ・プリントをすれば美しく価値のあるプリントができるなどということはない。

 

製版用フィルムにインクジェット出力することで鶏卵紙用のネガを作ることもできる。デジタルで出力したネガは諧調域がかなり狭いため、鶏卵紙とのマッチングはあまり良くない。そのため、デジタルネガから美しくプリントするには、トーンに少し工夫が必要になる。

 

 

アナログネガ

鶏卵紙は諧調域が広くコントラストが低いので、それに合った撮影をする必要がある。特に暗部のトーンセパレーションが良くないので、撮影時に暗部から中間部のコントラストに注意する必要がある。ハイライト部は飛びにくいのであまり気を使わなくてもいい。

 

  • 銀塩フィルム

暗部のトーンセパレーションのよいネガを作る。フィルム現像プロセスで細部のディテールがしっかり出るようにすると美しいプリントができる。露出を乗せ気味の濃いネガのほうがいい調子が出る。

 

  • コロジオン湿板

アンブロタイプのネガは濃度が低過ぎて良い調子にプリントできない。プリント用のネガを撮影する必要がある。銀塩フィルムのような化学現像のプロセスを経ない湿板写真は、現像プロセスでコントラストの調整ができない。そのため、撮影時のライティングとネガの濃度によってコントラストを調整する必要がある。露出オーバー気味に撮影してトーンカーブの足部を使わないようにすると、プリントの暗部のコントラストを上げることができる。

 

デジタルネガ

ピクトリコのTPS100などの製版用フィルム、OHP用フィルムなどが使える。デジタル画像の明暗を反転させて、左右(裏表)を反転させればネガのデータができる。ただ、そのままだと鶏卵紙のトーンにマッチしないため、コントラストを調整する必要がある。基本的にはphotoshop等のソフトウェアで暗部のコントラストを上げるように調整する。適正なトーンカーブのデータを得るためには、テスト用のネガを出力し実際にプリントしてトーンカーブを修正するという一連の作業を繰り返す。テストプリントをよく観察すれば、数回で自分のプリントに必要なネガのトーンデータを作ることができる。

albumen_print_curveこれはPhotoshopで作成した鶏卵紙用のトーンカーブの例。調整したポジ画像にこのトーンカーブを適用して、明暗を反転しネガ画像にする。。

暗部のコントラストを上げて、ハイライト側を圧縮するという基本的な調整は同じだが、使用する紙や処方によってトーンカーブは変化する。当然ながらプリントしたときに狙いたいトーンによっても変化する。

 

デジタルネガは諧調域が狭いため、諧調域の広い鶏卵紙にプリントすると見劣りがする。一般的に、デジタル画像はモニターで見る方がプリントしたものよりも美しい。モニターはデジタル画像の表示に最適になるように調整されているからだ。また、最適化されたアナログネガからのアナログ・プリントは、デジタルネガからのアナログ・プリントよりもよほど美しい。そのため、デジタルネガでクオリティの高いプリントを作るには工夫が必要になる。アプローチのしかたはいろいろあるが、結論としてはひとつしかない。それはプリントの持つ諧調域の一部を捨てることだ。暗部、あるいはハイライトを使わずに成立するようなプリントを目がけて調整する。そうすることで、デジタルネガからでもトーンが間延びせず、密度の高いプリントを作ることができる。次に述べるが、この方法はデジタルキャリブレーション(校正)とは相容れない。

 

プリンタのインク噴出量を直接操作できるソフトウェア。純正のプリンタドライバの代わりに使う。EPSONのプリンタに対応。鶏卵紙用ネガのカラープロファイルをオリジナルで作ることもできる。EPSONの純正ドライバよりも、インク濃度の微妙な調整ができる。

 

 

オルタナティブ・プロセスによる作品制作とデジタル・キャリブレーション(校正)
PhotoshopやQuad Tone RIP 等のソフトウェアとスキャナを組み合わせれば、モニター画面の画像とオルタナティブ・プリントのキャリブレーション(校正)が可能になるという発想がある。だが、かっこよく美しいプリントを作りたければ、それはさほど重要なことではない。なぜなら、質感が無く発光しているモニタ画面と、マチエールがあり質感があり反射光で見るオルタナティブ・プリントが、同じ画像である必要はないからだ。同じデジタル画像ならモニタで見た状態が最も美しいはずだ。そうであるなら、わざわざプリントする理由はない。

美しいプリントを作りたいのであれば、プリントした時にもっとも美しくなる画像データを得る必要がある。そのために必要な作業は、プリントの観察に尽きる。プリントテストと観察を繰り返しながら、最適なデータを追い込んで行くことが、美しいプリントを得るための最も近道だ。手に取り、肉眼で見た美しさがプリントの美しさだ。それ以外の出発点もゴールも存在しない。質感やマチエールの美しいプリントを作りたければ、デジタル的なキャリブレーションという発想は必ずしも必要ない。