鶏卵紙について

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moorland of Wuthering Heights albumen print/ 鶏卵紙 Kenshi Daito 2012

 

■鶏卵紙について

鶏卵紙(albumen print)はカロタイプを改良した写真プリント技法で、1850年にフランスで発明された。当時普及し始めた撮影技法のコロジオン湿板のネガと相性がよく、美しい画像が安定して得られたため、鶏卵紙は非常に普及した。

1855年ごろから20世紀になるまで、つまりゼラチンシルバー印画紙が工場で大量生産されるようになるまでは、鶏卵紙がもっとも一般的な写真プリントだった。

日本では、明治期の開港地の写真師たちが作った「横浜写真」が有名。これは鶏卵紙に手彩色したもので、外国人に人気の土産物だった。現存するものも多く、当時の「風俗」をよく伝えている。とはいえ、実際の情景を撮影したというよりむしろ、ほとんどの写真が当時の欧米人の異国趣味に迎合するような内容にアレンジされている。このキッチュな土産物は、ともすると現在も我々が無自覚に受けとめている「日本の伝統文化」のイメージを、文字通りに作り上げたと言える。

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■技法的な特徴

卵の白身で紙の表面に塗布膜(バインダー)を作り、それに硝酸銀を反応させて感光層にする。

塩と硝酸銀を反応させて感光性を持たせるのはカロタイプ(塩化銀紙)と同じ。バインダーを形成することで精細感があがり、処理も安定する。

 

■オルタナティブ・プロセスとしての特徴

技法的なポイントはさておき、かっこよく美しいプリントができなければ、わざわざこの技法で作品を制作する理由は無い。鶏卵紙には、デジタルプリントや市販のゼラチンシルバー印画紙では出せない魅力はあるだろうか。
 
マチエール(絵肌)

印画紙を自作するので、紙の選択肢は非常に広い。紙のテクスチャは直接プリントのマチエールに反映される。またバインダーを形成するため、プリントの表面に微妙な光沢感が出る。

質感

選択した紙の質感がプリントの質感になる。

水彩用コットン紙はもちろん、繊細な光沢の透けるような雁皮紙や、芯と張りのある楮紙、さらに粗く厚い杉皮紙など、多様な紙から作品のための質感を探すことができる。

トーン

鶏卵紙が再現できる諧調域はかなり広い。そのため美しいグラデーションを表現できる。ガラス湿板やフィルムなどのアナログ・ネガとの相性が良い。

鶏卵紙のアドバンテージは、マチエールと質感とトーンだと言える。つまりそれらを十分に活かしきれていないプリントであれば、作品としての完成度は低くなり、鶏卵紙でプリントする必然性もない。もっとも、全てのオルタナティブ・プロセスについても同様のことが言える。